オンライン配信
石川県 小松
石川県・小松市で日本遺産に認定されている2つのエピソードから、現地の石と海運の文化を着想元とした特別映像を配信します。 日本舞踊と、胡弓、笛(篠笛・能管)、邦楽囃子の情感あふれる音楽によって、小松が重ねてきた悠久の時間を表現。 芸能を通じて、現地の豊かな文化資産に新たな光を向けてゆきます。
日本遺産 「珠玉と歩む小松~時の流れの中で磨き上げられた石の文化」に認定された石川県小松市は、国内でも有数の鉱物資源の産地です。 2,000万年前、日本海側での活発な火山活動から霊峰白山が生まれ、碧玉(へきぎょく)などの宝石、良質の石材、 九谷焼(くたにやき)のもととなる陶石などを含む大地ができあがりました。
弥生時代には碧玉を加工した管玉(くだだま、装飾用の玉)、古墳時代には精巧な彫刻を施した腕輪が作られ、時の諸王たちを魅了しました。 そして江戸後期に小松市花坂地区で発見された陶石から生まれたのが、色絵陶磁器の最高峰「九谷焼」です。 明治期には欧米から「ジャパンクタニ」と称賛され、現在も多くの作家が、伝統の技法と新しい発想で世界に打って出ています。
こうした産物を江戸時代に小松から各地に届けたのが、小松のもう1つの日本遺産 「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」 として認定されている、海運の要の地、安宅(あたか)です。
NOBODY KNOWSでは、小松の石の文化と、それを国内外へ広めた北前船という二つの日本遺産の構成文化財から着想を得た特別映像を公開します。 小松という地を形成する石は、古くから祈りの対象である一方、現代では石材、九谷焼の陶石として産業につながり、豊かな文化の土壌となっています。 石の文化とともにある小松、悠久の時の中でめぐる季節のうつろいを、日本舞踊と、胡弓、笛(篠笛・能管)、邦楽囃子という伝統的な楽器を用いた音楽で表現しました。
今回の特別映像の舞台となったのは、岩山からなる那谷寺(なたでら)と、海に面した安宅住吉神社。 いずれも奈良時代からの信仰の地で、日本遺産の構成文化財になっています。
那谷寺は、碧玉(へきぎょく)やメノウなど宝石を産出した山の岩屋(洞窟)そのものを本堂としています。 戦国時代たびたび火災に見舞われましたが、1642年に前田利光公が再建し現在の形となりました。 起伏のある広い境内の一部は国の名勝に指定され、今回の撮影で使用した書院をはじめ、三重塔、鐘楼などは国の重要文化財となっています。 足元は美しい苔に覆われ、静謐な空気が漂います。
江戸時代中期から明治にかけては北前船の寄港地として繁栄し、陸海の交通が交わる安宅は、歌舞伎の演目『勧進帳』で有名な関所が置かれた場所。 『勧進帳』は、源義経と武蔵坊弁慶らが源頼朝の追手から平泉に逃れる途中の、安宅の関での出来事が題材となっています。
当地の安宅住吉神社は、難関突破・航海安全の守護神として信仰されています。
毎年9月上旬に行われる「安宅祭り」は、海の荒れるこの時期に、漁師たちが航海の無事を神に祈ったことが始まりと伝えられています。
この祭りで舞われる安宅宮獅子舞は、獅子舞が盛んな鶴来(つるぎ/白山市)から「加賀獅子」を学び伝えています。
加賀獅子は、大きな獅子頭に向かって、武術の技を取り入れた棒や薙刀、鎖鎌などの武器で戦い、獅子を討ち取る「獅子退治」が特徴です。
今回の映像では、安宅宮獅子保存会の「棒振り」に、尾上右近さんが挑戦しています。
小松の豊富な資源を育む自然への祈りと、悠久な時間の中で幾度も巡ってきた四季を表現した特別映像。
プロローグは、碧玉の原石をもち悠久の石の文化に想いを馳せる尾上右近さん。苔むす境内での祈りのシーンからはじまります。
春は花。那谷寺と名づけた花山法皇(かざんほうおう)の行幸を思い起こさせる雅な音色。 金堂華王殿の回廊から、篠笛と鼓の音の掛け合いが繰り広げられます。 小松にも工場を構える世界有数の繊維企業・サンコロナ小田株式会社が開発した薄手の織物「オーガンザ」も使い、春の空気感を伝えます。
夏は風。安宅住吉神社と安宅海岸で撮影した勇壮な獅子舞が登場します。 安宅祭りでは3日間かけて約600軒の家々をまわる安宅宮獅子は、一度途絶えていたものが復活し、現代的なアレンジが加わったもの。 安宅宮獅子保存会に尾上右近さんが加わったコラボシーンも見所です。
秋は月。月の光に照らされた胡弓本曲「蝉の曲」(作曲:吉田検校)のソロ。胡弓の技巧を活かし、蝉(ヒグラシ)の鳴き声を想起させる旋律が織り込まれています。 会場となった那谷寺の書院は、那谷寺を再建した前田利常公が晩年を過ごした場所。現在のお寺の基礎を作った利常公を偲んで、美しい音色が響き渡ります。
冬は鳥。小松に飛来するコハクチョウをイメージして振付された、尾上右近さんによる日本舞踊です。 音楽は、胡弓、篠笛・能管、邦楽囃子による「焔(ほむら)」(作曲:木場大輔)。 邦楽囃子は複数の打楽器を扱い、「ヨー」「ホー」という掛け声でも音楽を盛り上げます。
勇壮な棒振りなど、武具をもって獅子を討ち取る「獅子退治」の演舞を特徴とする「加賀獅子舞」の系譜の獅子舞。 1979年に青年団の再結成とともに復活したが、町内の家々への巡業の負担は大きく、人手不足と道具等の老朽化により、その後存続の危機に陥る。 1989年に現在の安宅宮獅子保存会が発足し、青年団OBを中心に運営している。
清元宗家七代目 清元延寿太夫の次男、曾祖父は六代目尾上菊五郎。7 歳で歌舞伎座『舞鶴雪月花』の松虫で初舞台。12 歳で新橋演舞場「人情噺文七元結」の長兵衛娘お久役ほかで、二代目尾上右近を襲名。2018年1月清元栄寿太夫を襲名。同年よりNHKラジオ「KABUKI TUNE」パーソナリティとして歌舞伎をはじめ伝統芸能の魅力を発信。
淡路島出身。古典胡弓を学ぶ一方で文楽、風の盆、尾張万歳など日本各地に伝わる胡弓の奏法を研究。 演奏法や低音域を拡張した四絃胡弓の開発、作曲など、胡弓の伝統に新たな光を当てている。 胡弓と箏やピアノとのユニット活動の他、胡弓と世界の擦弦楽器による「異文化弦楽団」を主宰するなど、幅広く活動している。NHKワールド「Blends」出演。
藤舎流分家笛家元の祖父、藤舎秀蓬、伯父の藤舎名生、父の中川善雄に師事し、2004 年「推峰」を襲名。 東京藝術大学・大学院在学中に浄観賞、同声会新人賞、アカンサス賞を受賞。 国立劇場主催公演やNHK「にっぽんの芸能」など、演奏会、放送に多数出演し、海外公演にも参加。 古典芸能の活動の他、ポップスアーティストの公演、レコーディング等にも参加。令和2-3年度文化庁文化交流使。
幼少期より和太鼓をはじめ、2019 年、東京藝術大学邦楽科邦楽囃子専攻卒業。在学中、稀音家浄観賞、安宅賞、アカンサス音楽賞を受賞。 「平成中村座スペイン公演」「野村萬斎主演 現代能安倍晴明」はじめ国内外の公演で囃子方として活動する一方、NHK 大河ドラマ「直虎」やピタゴラスイッチにも鳴物で出演。
奈良県出身。華やかで力強い芸風が持ち味で、古典の舞踊を基盤に数々の公演で活躍。 文部科学大臣奨励賞、舞踊批評家協会新人賞等受賞。振付助手として比叡山薪歌舞伎、蜷川幸雄演出作品、宝塚公演等にも参加。 「NOBODY KNOWS」では日本遺産ストーリーを活かした舞台の構成・演出を行う。
石川県金沢市出身。2006 年より映像制作会社にてテレビ番組や CM などの制作を行う。 2012 年独立後、 CENDO Inc.に参画。CM やプロモーションビデオなど、様々なジャンルの映像制作を行なっている。
NOBODY KNOWS [令和3年度 日本博主催・共催型プロジェクト]
主催:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)
共催:小松市
後援:環境省
協力:那谷寺、安宅住吉神社、安宅宮獅子保存会、公益社団法人日本舞踊協会
美術協力:サンコロナ小田株式会社
映像プロダクション:株式会社アビックスタジオ金沢 音響:石丸組
映像プロデュース:ドローイングアンドマニュアル株式会社
写真撮影:高橋俊充
企画協力:縦糸横糸合同会社
広報協力:三声舎 コミュニケーションデザイン:株式会社Que
デザイン:株式会社ガーデン Web制作:株式会社テオ